不思議なことに(?)、私はこれまでの人生で一度も「ワタナベさん」という方からイヤな思いをさせられたことがありません! いつもは「どんな方だろう」とドキドキしながらうかがう取材ですが、取材先の担当者さんが「渡辺さん」だと分かっている時には、密かにかなり安心した気持ちでドアを開けています。
9月25日に発売になった「おいしい秋、見つけた。ニセコ・洞爺・伊達・室蘭」の号では、洞爺のページで「渡辺豆腐店」さんにおじゃましました(HO Vol.60 P.37)。
この取材がまあ…(涙)。作業風景の撮影をさせてほしいと無理にお願いし、(にもかかわらず他店の取材時間との関係で)本来11時ごろに行う「揚げ」の作業を12時ごろに遅らせていただきその頃にうかがうようことになっていたのですが、当日、悪天候もあって1件目から取材予定が狂い(言い訳です…)、12時にもまったく間に合わなくなってしまったのです。
お電話をしたところ、優しく柔らかな声の奥さんが「朝からそのつもりで準備していたので、できれば今日来ていただけると助かります。12時半くらいまでなら待てますよ」と言ってくださったのですが、12時半にもまるで間に合いそうになく、翌朝7時の豆腐作りの仕上げ作業時間に取材を変えていただきました。
ところがです。翌朝、ネット地図を鵜呑みにしたバチがあたってまさかの迷子!(これも言い訳…) お店に着いた時にはとっくに7時を回っていました。お店に入ると奥さんが困り切ったお顔で「お父さん、お怒りで…」と。
追い返されることを覚悟しながら作業場に入り挨拶すると、ご主人は最初何かおっしゃろうとしたのですが口ごもってやめ、ニコッと笑顔になり「で、何から聞きたいの」と言ってくださったのです。その時のありがたかったこと…。逆に頭の中が真っ白になり、何を聞きたかったのやら分からなくなりちんぷんかんぷんな質問を連発してしまいましたが、ご主人はひとつひとつ丁寧に答えてくれました。
お話を聞きながら思い出したのは、子どものころ家の向かいにあった豆腐屋さんのおばあちゃんの、ふやけたように白く大きくなった右手。いつも冷たい水に手を浸けて作業をするからそうなるのでしょうね。柔らかなやさしい手で、お豆腐とお釣りを渡してくれましたっけ。こちらのご主人の手も、同じように大きな手でした。
帰り際、お豆腐を持たせてくれ「豆腐は温度で食感が変わります。今、8℃の水槽から出した時の味・食感と、受け取っ本当にて手の熱で10℃になった時、家に着いた時、味噌汁や鍋にして温めた時の味・食感は全部違います。一度温まったものは8℃の時の味には二度と戻りません。できれば今一口食べてみて、そして帰ったら半分は冷やで、半分は温めて食べてみてほしいんです」と教えてくれました。
…にもかかわらず。結局、誌面の都合で渡辺豆腐店は1/2Pというほんの小さなスペースに。あんなにご迷惑をかけ通して撮らせていただいた作業風景の写真を1枚も使えていないというこの事態。仕事をしていて、もう一番泣きたくなる瞬間です。
渡辺さんのお豆腐は本当に本当においしい! 味がしっかりあって温度によって違うふんわり感、ぎゅっと感、甘みが登場します。そしてお豆腐と同じく絶品なのが「お揚げ」。お味噌汁に入れたらお豆腐からもお揚げからも、とてつもなくおいしいだしがあふれだし、普段あまりお味噌汁を飲まない子ども達もおかわりしていました。奥さんに教わった通り、小揚げを半分に切って中に長ネギと納豆を詰めて焼いたらこれまた驚くほどのおいしさで、長ネギ嫌いの下の子に私の分もとられてしまったくらい。(さらにワタシ的には、水をまったくこぼさせないあの包み方、あれもまたすごい技術だと密かに感心しています)
営業時間は朝7時からですが、6時ごろには常連さんが訪れるので店は開けているそうです。朝食に間に合うように、なのでしょうね。そのほか伊達や室蘭付近の方が、早朝、ニセコや真狩方面に水を汲みに行く途中に寄ることも多いのだそう。年配のお客さんも多く、雪の降り始めに必ず来店し「今年はこれで最後。来年、春になったらまた来ますね」と挨拶していく方もいるそうです。
まもなく美しい紅葉に彩られる洞爺湖。北岸から眺める景色もいいものですよ。お出かけの際は渡辺豆腐店に寄ってみてください、できればクーラーボックスと保冷剤持参で!
渡辺さんの奥さんがくださった、それはそれはあったかいお便り。生粋の「職人」であるご主人を心から尊敬して常に立て、大切にしているのが本当によく分かる素晴らしいお人柄です。私も少しはオットを大事にしなきゃあと猛反省したものの…。思っただけで実行に移せず。とほほ。そうだ、今日くらいは発泡酒でなくビールを買って帰ろう(…で、うっかり自分が飲んじゃったりして^^;)。
●渡辺豆腐店● 壮瞥町仲洞爺15 営業時間:7:00〜14:00(売切れ次第閉店) ※洞爺湖をぐるっと回る道沿いにあり、決して迷うような場所ではありません。
(ひろみ)
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JR北海道では、10月27日のダイヤ改正に伴い、ツインクル旅行券や宿泊券、お食事券が抽選で当たる、「JR学園都市線ぐるっとキャンペーン」を実施します。 学園都市線の新たな発見の旅に出かけましょう!- ■キャンペーン期間
- 平成24年9月25日(火)〜11月25日(日)
- ■キャンペーン概要
- 期間中、紹介した店舗にてお食事いただいた方に「ぐるっとキャンペーン」チケットを一枚お渡ししております。
ご利用いただいた店舗にてKitacaをご提示いただくと、さらにもう1枚プレゼント! 詳細はこちらのPDFファイルをご覧下さい。 - ■送り先
- 〒064-0809
札幌市中央区南9条西1丁目 財界さっぽろビル4階 株式会社ぶらんとマガジン社 ぐるっとキャンペーン係 締め切りは平成24年11月26日(月)(当日消印有効)です ※「ぐるっとキャンペーン」の対象店舗は今月25日発行のHO60号(2012.11月号)「JRでおいしい旅 発見の旅へ」にて紹介しております。 |
昨年の十勝特集が好評だったのを受けて 『二度目からの十勝』というタイトルで、8月25日に十勝の総力(?)特集号を発売しましたが、みなさんご覧いただけたでしょうか?
「去年いろいろ取材して、いい店はほとんどやっちゃったんじゃないの?」 なんて思いってる方いませんか? (ちなみに、取材に行くまでは私も心の片隅でそんなことを考えていました(苦笑)) なんのなんの。十勝の底力はそんなもんじゃありません。 打ち出の小づち並みに、たたけば(?)ざくざくとお宝(いい店・いいスポット)がでてくるのです。 野菜にお肉、お魚まで、食材豊富なエリアなので、新鮮でおいしいものが多いのも特徴。 取材であちこちを回りながら「パワーのある地域だなぁ」としみじみ感じました。
今回お邪魔して、印象に残ったお店はさまざまありますが 「読者の方々に絶対見てほしい!」と思ったのが、この写真。
綺麗でしょう! 見ているだけで楽しくなってきますよね。 こちらは、美珍樓西家(P60)の飲茶。 (ちなみに奥の緑色の飲茶から時計回りに紀州梅肉翡翠餃子(4個)490円、豚肉の小龍包(2個)380円、甘海老と海老味噌の小龍包(2個)480円、にらむし餃子(4個)390円、中央の2種は、レースのような羽が付いている方がふかひれ餃子(4個)600円、ころんと丸いのが海老むし餃子(4個)390円です) 2ページでは描き切れなった、お店の魅力をここでちょっとご紹介させていただきます。
美珍樓は、帯広で45年続く人気の中華料理店です。 安くてメニューも豊富、気軽に家族で楽しめるお店として帯広では広く知られています。 と、概要だけを聞くと中華のファミレスみたいですが、 実はかなり本格的な料理を提供してくれるのです。 最初にご覧いただいた飲茶も、皮まで全部店内で手作り。しかも、「その日の分はその日のうちに」というモットーで、作り置きさえもしていません。
こんな感じに毎日作っていらっしゃいます。そして、デモンストレーションも見られる。 ビックリしたのは、水餃子と焼き餃子の皮と具をきちんと作り分けているということ。
↑は水餃子(6個)420円。豚肩ロース、エビ、ニラ、キャベツなどシンプルな具材。豚肉の食感と味わいがしっかり伝わってくるところもいい。たれは付けずとも具材の旨みで十分おいしい。水餃子好きにはたまらない皮のもちもち感です。
店長の鈴木さんは「そんなに珍しいことですか?」とこともなげにおっしゃったけれど、 飲茶だけでも20種近く用意しているのに、それぞれ作り方を変えるなんて 想像するだけでも下ごしらえが大変そう…。 「朝7時くらいから、10人態勢で準備していますね。餃子なんかはよく出ますから、一日ずーっと作っていますよ」
厨房は、20人弱の職人が手を休めず働いていて熱気と活気がある 他のメニューだってもちろん手作りですし、ラー油やらXO醤やらの調味料まで自家製ですから、半端ない作業量だと思います。
手作りのラー油、XO醤、椒塩は店頭でも販売しています。 スタッフの方たちもご自宅で使っているそうです
手を抜かず、どんな料理とも真摯に向き合って作る という姿勢は創業者であるお父様の姿から無言で教えられたことだそう。
待合ではお店の歩みを紹介した写真が見られます 「厨房では本当に厳しい父でした。まさしくスパルタ教育(笑)。叩き込まれたという感じですね。でも、おかげでこの味を守ってこられているんだとも思います」 と鈴木さん。 懐かしそうに語っていただいた怒られエピソードには、身の縮むような話も。
先代は、カリスマ的に店を牽引していきましたが、今のスタッフは実に和気あいあい。 仲のよさが楽しそうに働く姿にも現れていて、取材しているこちらも気持ちのよくなる雰囲気でした。そのせいもあってか、お店は長く勤める方、武者修行(?)に出て戻ってくる方が多いそうです。 一番古い方は、先代とも一緒に厨房に立っていたことがあるとか。
忙しい中全員集合してくださいました! 前列中央右が鈴木店長です。 「いい仲間に囲まれて仕事ができるということが、なにより幸せですね。これからもスタッフ同士仲良く、切磋琢磨しながら店を続けていけたらと思っているんです」
真面目に丁寧に作る料理と、アットホームな雰囲気にひかれて 店はいつもお客さんでいっぱいです。
↑ランチバイキングのこのにぎわい。「11時になると客がなだれ込む」という本文の表現は誇張ではありません。
取材の際に飲茶を味見させていただきましたが、どれも皮がもちもち、具もそれぞれ個性があって、味わい深いものばかり。 誌面ではランチバイキングを紹介しましたが、昼間も夜と同様の一品料理が楽しめますし、 リーズナブルな値段ながら、北京ダックのようなリッチなメニューもそろっています。
↑2階は個室になっていて、ゆっくり食事を楽しめます。 家族でお祝いなどに使うお客さんも多いそうです
そして、なにより心のこもった接客が受けられます。 特に飲茶好きの方は、かなり満足できると思いますよ。
美珍樓さんはじめ、実は十勝って思いのほかおいしい中華の宝庫なのです。 今回のHOにも中華のお店がいろいろ載っています。 札幌からの直通高速道路も開通して、近くなった帯広を拠点に 皆さんもこの秋は、十勝旅に出てみてはいかがでしょう? もちろん、旅のお供には新しいHOをお願いします。
(みさと)
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「アートのある日常を。街中にアートが溢れ、気軽に楽しめる環境づくりを目指します。展示情報、参加ギャラリーや作家、店舗からの情報も発信します。札幌から展開中。参加店・サポーターも募集中です!」
…というのは Clark Gallery+SHIFT さんが展開する「まちなかアートプロジェクト」のコンセプト。 (※詳細はこちら:http://www.machinakaart.com/sapporo/exhibition/) Clark Gallery+SHIFT さんは円山にあるギャラリーで、今朝初めて伺いましたが、森のような、宇宙のような、隠れ家のような、とても素敵な空間に、とても素敵な作品を展示しています。「ギャラリーはどうも敷居が高い気がして入りにくくて…」なんて心配はご無用です。素敵なスタッフさん達が気さくに出迎えてくれますから。
さて、PIVOT5階のカフェ・フェリーチェではまちなかアートプロジェクトの一環として「新矢千里展」が行われています。
壁に飾られた作品だけでなく、クッション、フェルト製のフラワーも、すべて新矢千里さんことKINPROさんの作品。KINPROさんらしく「自然から創造したモチーフ」と、フェリーチェさんの洗練された落ち着きのある雰囲気とがマッチして、居心地いいことこの上ありません。
クッションカバーとフラワーは販売も行っています。(ステンシルクッションカバー2625円・Flowes1575円。1つ1つ、心のこもった手作りですよ!
ところで、フェリーチェさんの名物といえば「とろふわ卵のキーマオムカレー」と素敵なラテアートがほどこされた「カプチーノ」。ラテアートはちょっぴりワイルドながら「かわいいもの大好き」とおっしゃるキュートな店長さんの作品だそうです。こちらも楽しみですねー。近いうちにまたおじゃまします♪
●新矢千里展 会期:2012年8月1日〜10月31日 会場:カフェ フェリーチェ 住所:札幌市中央区南2条西4丁目 PIVOT5階 営業時間:10:00〜20:00 定休日:PIVOT休館日に準ずる TEL:011・281・8787 http://www.clarkgallery.jp/exhibition/chisato-shinya-exhibition/
●Clark Gallery + SHIFT (クラークギャラリー プラス シフト) 住所:札幌市中央区北1条西28丁目2-5 CAI 営業時間:平日 10:00〜18:00 ※上記以外の時間についてはお問い合わせください。 TEL:011・213・8222 http://www.clarkgallery.jp/ http://twitter.com/clarkgallery
(ひろみ)
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昨年に続き「十勝」を特集したHOが、間もなく発売されます。帯広をはじめ十勝16町2村のおいしいものや見どころを集めたアツい一冊、これから秋に向けてのお出かけに、ぜひ参考にしていただけたらうれしいです。
今回、私が主に担当したのは帯広の歴史のページ。駅前再開発がなされ、きれいに整った印象の強い帯広駅前ですが、よくみれば「昭和の面影を残す建物」や「近代的な建物だけれど実は戦前から続く老舗」もたくさんあります。
古い写真・地図をそろえるため、帯広百年記念館および帯広市図書館の皆さんには、大変お世話になりました。花火大会直前、お祭り真っ最中のお忙しいときに、アポも取らずに突撃で何度も押し掛けてご迷惑をおかけしてしまったのにあんなに親切にしていただき、どんなに感謝しても足りません。
百年記念館では、誌面でも紹介したアマチュア写真家・荘田喜與志さんの写真を膨大に所蔵しており「昭和●●年ごろの、どこどこの写真がほしい」と言うと、まるで人間コンピューターのような副館長さんが「それならここに…」と、ささっと出してくれました。私が生まれる数年前〜10年前、帯広駅前はこんな風景だったのですね。
また誌面では紹介できませんでしたが、昭和30年代、現在の道新(西4条南9丁目)付近では朝市が立っていたとか、昭和38年には十勝川でモトクロスの大会が行われていたとか、荘田先生の写真は本当に幅広く興味深いものばかりでした。
さらに今回の取材で感激したのはふじもり食堂、藤丸、文盛堂、カラサワ靴店…等々、取材に協力してくださった老舗の皆さんが、とにかく親切でアットホームで温かかったこと。帯広が大好きになりました。ウワサに聞いていた「リスに注意」の看板も見られたし、朝4時から取材にうかがった帯広畜産大学では可愛いエゾリス君がお見送りをしてくれました。
余談ですが、締め切り後の日曜日「インデアンのカレー食べたい! リス見たい!」と子どもたちにせがまれて帯広を訪れたところ、音更町の住宅街で、道路に飛び出してきたリスをもうちょっとで轢いてしまいそうになりました(後ろの車に追突されなかったのが不思議なくらい)。「リスに注意」の看板はダテではありません。町内ではくれぐれもゆっくり、注意しながら走りましょう〜。
ちなみに、十勝で私が一番好きな場所はここ。鹿追町の扇ヶ原展望台と然別湖です。取材で滞在中、少々早めに宿を出て寄り道しちゃいました。編集長にはもちろんナイショです♪
(ひろみ)
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