1995年12月6日、都市型ビアホールという触れ込みでススキノのはずれに「キリンビール園」がオープンした。キリンビールのおいしさを地元の人にも味わってもらおうというのがコンセプトで、そのころ一番搾りが出てキリンビールに道民は注目し始めていた時期だったが、飲食店ではまだ珍しい存在だった。サッポロビールの地元、さらにはアサヒスーパードライが絶好調。今では信じられない話であるが、キリンを飲んだことのない人が結構まわりにいた。
だから1階は地元客が利用する居酒屋風、2・3階は観光客と団体のホール席、法人契約の会員制VIPルームも設け、広告もローカル雑誌に出し、徹底して観光客だけではなく、地元のリピーターを増やす作戦に出た。
なにせ小社から徒歩数分という距離なので、よく利用させていただいた。夏になるとジンギスカンの香ばしいにおいが漂い、誘われるように足を向けたものだ。漬け込みジンギスカンに抵抗のある人からは賛否両論という感じではあったが、立地の良さが外野の声を押しのけて賑わっていた。ここの頑張りに刺激されて、業界全体のレベルアップにもつながったと思う。
当時、サッポロビール園、アサヒビール園+百景園、サントリー紅桜庭園という大型ビアホールのブームで、キリンのすぐ後に紅桜ができたはず。札幌を皮切りに全国にキリンビール園を作る計画があり、博多をはじめ何か所か実際にできたはず。もちろんジンギスカンとビールの組み合わせではないのだが。
本館の功績に話を戻すと、味付けジンギスカンを札幌に広めた先駆者であり、今でも続くタレ派?漬け込み派?論争が勃発したのも懐かしい。焼き方も独自で、テフロン加工のジンギスカン鍋の上にもやしを敷き、味付け肉を載せる。焦げを防ぐためなのだが、いわば蒸し焼き方式。野菜の蒸気で柔らかくなった肉を、タレにつけて食べるのがキリンビール園流だった。(実は漬け込み+後付けの中間派)今は味付け肉以外にも、生ラムをはじめ、たれや塩、具材など、いろいろな味付けとバリエーションで楽しめるメニューが豊富に用意されており、さながらジンギスカン見本市の様相を呈している。
昭和の建物で老朽化も進むことから、現在の場所で営業続けることが難しいのは分かっていたが、閉館は残念としかいいようがない。建て替えの噂(期待)も消えることがなかった。総席数884を超えるような大型飲食店が誕生することは、この先もうないだろう。
これからは、あの味が恋しくなったら、アーバン店(350席)を利用させていただくことにしよう。
オープン時の広告
キリンビール園本館中島公園店 札幌市中央区南10条西1丁目1-60 011・533・3000 営業時間/11:30〜22:00
キリンビール園新館アーバン店 札幌市中央区南3条西4丁目 アーバン札幌ビル7階 営業時間/17:00〜23:00 ※土・日・祝16:00〜23:00 011・207・8000
http://www.kirinbeer-en.co.jp/
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